しんさんのブログ

科学や技術のこと読書のことなど

2021年年末から2022年年始の読書

年末年始の読書まとめ

せっかくまとまった時間があるのでバランスを考え、技術書、エッセイ、ノンフィクション、小説からまんべんなく選んで読み進めました。

 技術書


コンピュータビジョンに関する最新のトピックをわかりやすく解説してあります。
コンピュータビジョンの分野は今、自動運転やロボティクスなどの応用先とそれを支える基礎研究としての深層学習の急速な発展でものすごいスピードで論文が出版されたり技術が発表されています。
企業の研究者としてそうした最新の技術を効率よく理解し広く知識を仕入れるためには良質な解説やレビューが欠かせませんが、本書はそれにぴったりでした。
今回が創刊号ですが、今後定期刊行していくようなので今後も読み続けようと思います。

エッセイ


この本は年末にリラックスしながら読めました。
軽妙な語り口で物理屋さんの生態を面白おかしく紹介していて、自分も物理をやっていただけに笑いながら読んでしまいました。
確かにこういう思考しちゃうよねっていうことや、物理学教室に巣食う人々の生態など物理の研究をやっていたころをなつかしく思い出しながら思わず笑ってしまいました。
やっぱり物理の研究はいいものだな、と改めて思います。
本書は2021年に読んだ本、ベスト1ですね。

ノンフィクション


寒い冬に冬山の本を暖かい安全な部屋の中で読むというのも楽しいものです。
タイトルから想像する内容とは違い、結構厳しい内容の本でアルピニストたちが厳しい登山で命を落とす話です。
安全で便利な社会にどこかなじめない、共感やコミュニケーションを重視する世の中に息苦しさを感じる、そんな社会から抜け出して一人冬山と格闘するという世界にあこがれもあります。
しかし実際には、想像するような生易しいものではなく常に死と隣り合わせの厳しい世界です。
そんな自分の命と向き合い自然とたたかうアルピニストにあこがれを抱きました。

フィクション

村上春樹を選んでみましたが、文庫本上下巻に分かれて長いのでいまだ読書中です。
1/31ようやく読了しました。
上下巻で約800ページと長い小説ですが村上春樹の本は文字を追っている時間が心地よくて800ページ読んでももっとずっと読んでいたいという余韻が残ります。
とはいえ、また村上春樹に手を出すと心地いい場所に沈み込みそうで怖いのでまた来年のお正月休みまで春樹は取っておきます。
内容はというと、羊男にすべてが繋がるからまった世界。
これは今はやりの言葉でいうメタバースの世界で踊り続ける主人公の話なのか。
ネタバレになるので感想はこのあたりにしておきます。

「新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体」と「新型コロナワクチン本当の「真実」」 宮坂 昌之 著

新型コロナに関してきちんとした知識をわかりやすく解説するを読みたいならこの本がおすすめです。

新型コロナが流行してからずいぶん経ちますがマスコミやインターネットで書かれていることが科学的に正しくなかったり、生データをただ垂れ流してそれを非常にいい加減な方法で解釈して結論付けたりしている記事が多くて辟易としていました。
この本は、免疫学者が人の免疫が働くメカニズムを丁寧に原理から解説しています。

ニュースでよく耳にする「中和抗体」っていったい何かが分かります。

タイトルには”新型コロナ”とありますが、コロナに限定せずそもそも外部から侵入したウイルスに対して人の免疫システムはどのようにこれを排除するかを自然免疫と獲得免疫のそれぞれの役割や2つの免疫システムの関連を詳細にわかりやすく説明しています。
ニュースでたまに聞く中和抗体ってどういうものでどのような仕組みで生成されるのかが、リンパ球であるヘルパーT細胞やB細胞から中和抗体への流れがわかります。

自然免疫も侮れないと、目からうろこでした。

さらに、自然免疫の働きや重要性には驚きましたし、自然免疫も訓練されワクチンにはこれを増強するためのアジュバントという物質が添加されていることも知りました。

免疫システムの全体像がわかります。

またそういう免疫システムを活性化するためのインターフェロンやインターロイキンがいつどのタイミングでどの細胞から出されそれによって免疫の何が活性化されるかが書いてありました。
本書が書かれたときにはまだmRNAワクチンが普及していなかったので、一般的な様々な種類のコロナワクチンとして可能性のあるものが列挙されています。

ウイルスにつていワクチンについてわかっていることわかっていないこと、がわかります。

人類はまだコロナウイルスにつて十分な知識を得ているわけではありませんし、まして人の免疫システムについても分からないことが沢山あります。
本書は何がわかって何がわかっていないのか、それを免疫学者としてエビデンスを示しながら素人にも分かるようにかみ砕いて解説してくれるありがたい本でした。

宮坂 昌之さんの「新型コロナワクチン本当の「真実」」も読みました。

こちらの本は、さらにワクチンにフォーカスを当てて詳細解説やコロナに関しての混乱する情報に対して名指して間違えや注意喚起をしてくれている本です。
コロナに関して2冊目に読むならこの本を勧めします。

もっと読みたくなりました。

コロナを知るつもりが、人間の免疫システムの巧妙さや柔軟さそして複雑さに魅了されてしまいました。
次は免疫だけに焦点をあてた本を読みたくなりました。

NeurIPS 2021, Siggraph Asia 2021,

NeurIPS 2021のペーパーリスト

neurips.cc

openreview.net

気になる論文

"Light Field Networks: Neural Scene Representations with Single-Evaluation Rendering" Vincent Sitzmann · Semon Rezchikov · Bill Freeman · Josh Tenenbaum · Fredo Durand

Light Field Networks: Neural Scene Representations with Single-Evaluation Rendering

Siggrap Asia 2021ペーパーリスト

SIGGRAPH Asia 2021 Papers

2021年気になるAdvent Calendarリスト

今年の気になるAdvent Calendarリストです。

一応カテゴリー別に分けましたが、複数カテゴリーにまたがるテーマもあります。
クリスマスまで徐々にコンテンツが増えていきそうで楽しみです。

まとめ

今年も魅力的なカレンダーが沢山あります。
リストは随時更新していきます。

「2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ」を読みました

インターネットが当たり前に生活に浸透し、スマートフォンを誰もが使うようになったのはいつだったかなと考えると、意外と最近だなと気づきます。
これが本書でテーマにしている”加速”ってことです。
加速的に発展する科学や技術も最初はその加速にほとんど気づかないですが、ふと気づくとあっという間にその成果が身の回りにあふれかえっています。
指数関数的な変化ってつまりドラえもんでいう”ばいばいん”です、気づくとどら焼きを宇宙に捨てないといけないほどあっという間に増えてしまっているのと同じです。
この本では、そういう加速するテクノロジーがさらに組み合わさって、著者のいうコンバージョンが起きてさらに加速が進むという変化によりこれから世の中は今まで100年かかって起きたような変化が数年で進むよ、と述べてます。
人間は基本的には線形に変化する現象つまり1+1=2になるような変化には慣れていますが、指数関数的な変化を想像することは難しいのですが、本書はそのような変化がテクノロジーの分野で次々と起こって今後世界は大きく変わるという予言をしています。
基本的にポジティブな技術で明るい未来が開けるっていう楽しい話が多いのですが、第3部ではこれから人類が直面するかもしれない環境問題、食糧問題、水不足、紛争、などに対しても言及しています。
で、読んでいると結局それもテクノロジーで解決できるかもという底抜けに技術信奉、明るい未来ポジティブ思考の本でした。
本書のようにすべてがバラ色だと楽しい未来になりそうです。技術に対してポジティブになりたいときにはお勧めです。
日本についても結構言及されていて、ロボットについては日本の技術も注目されていることが分かります。

私自身は、テクノロジーで便利な世の中になるのはうれしいですが競争に巻き込まれて必死になるよりは、家族や落ち着く仲間たちと静かに穏やかに過ごしたいです。

2021年ノーベル賞

2021年ノーベル賞のわかりやすい解説記事

ノーベル生理学・医学賞

唐辛子を食べて口の中が痛くなるのはカプサイシンに反応するセンサーがあるからだそうですが、そのセンサーは周囲の温度が43℃を超すと活性化する痛みを感じるセンサーでもあるそうです。
熱も化学物質もセンシングできるセンサーに応用できそうです。 www.nikkei-science.com

ノーベル物理学賞

物理学賞は複雑系というくくりですが、大きくは気候に関する研究と物性物理に関する研究に賞が与えられました。
気候や気象というと地学というくくりのイメージがあって物理という感じはしなかったのでそういう意味でも今回の受賞は画期的だったのではないでしょうか。 www.nikkei-science.com