「Learn or Die 死ぬ気で学べ プリファードネットワークスの挑戦」西川、岡野原著を読みました

プリファードネットワークス(PFN)という会社に対する私のイメージは、優秀なエンジニアや研究者が集まっている謎のスタートアップというものでした。
ディープラーニングという技術に全振りしてその技術で世界を変えてやろうという野心的な事業をしているのがPFNであるということも知っていましたが、そのPFNの生い立ちと現在、そして未来についてファウンダーであり経営者でもある二人の著者が自らの言葉で語っているのが本書です。
タイトルのLearn or Dieは、研究者ならだれもが知っているであろうPublish or Perishにちなんだものなのかと興味を惹かれたことも本書を手に取った理由です。

そしてこの本は、PFNで働く社員への経営者からのメッセージでもあるのかなとも思いました。社員数の非常に少ないスタートアップが徐々に規模が拡大し、複数の異なる事業が立ち上がり始めると、社員数も増え、徐々に求心力が失われたり経営者との直接の対話が減ってきたりします。
そのタイミングで二人の経営者が、自分たちの考え方、将来の会社の在り方を明確に活字にするということに意味があったんだと思います。
同時に、外部に業務を委託しその管理を仕事だと思ったり。社内政治にいそしんだりする日本の大企業のエンジニアこそ"Learn or Die"を実践し、自ら手を動かさないと将来生き残れないぞという強烈なメッセージにも感じました。

本書の記述で非常に共感し気になった部分をメモとして残しておきます。

  • PFNの4つのバリュー
  • 世界中のあらゆる場所で活躍するロボットの時代が来る
  • パソコンが普及した理由の一つは「デバイスの抽象化」にあったという仮説を立てている。
  • アニメの表現が人とロボットとのやり取りを実現するときに役に立つのではないか
  • 物理的な世界とバーチャルなところの境界がどんどん曖昧になってきてどちらでもいい世界が来るかもしれない
  • 一つの重要なテーマは「メタ学習」だ
  • VC相手だと不毛なやり取りを繰り返したあげく、おそらく最後は爆発して話がなくなっていた
  • 理不尽な論理はいっぱいある。そこに巻き込まれないように徹底的に交渉する。
  • 重要なのはお互い丁寧に接し合うことだ。「お前これやれ!」みたいな言い方、やり方は絶対に許さない。
  • 制御理論を突き詰めたものに対して、強化学習や深層学習ベースのアプローチは全く異なる。
  • 量子コンピュータは注目しているが、現実的に面白い問題を解くところとはまだギャップがある。
  • 自分の経験からしかものが見られない人のことは「経験厨」と呼んでいる

いま、PFNはコアになるプロダクト、収益の柱になり同時にそれを通じて技術を発展させられる事業を生み出そうと苦しんでいる。
PFNがリアルタイムで経験しつつあることは、ひょっとするとGoogle検索エンジンの画期的なアルゴリズム開発からスタートし、それを広告ビジネスへと結びつけて継続的に利益を得ることができるようになる過程なのかもしれないです。

本書からその生々しい苦しみや試行錯誤、そして研究者や技術者の楽園を作るべく奮闘している様子を感じることができます。