人の行動が様々な認知的なバイアスにより意識的あるいは、驚くべきことに全くの無意識に影響を受けているということに驚きました。
ただそのような行動が論理的でないからと言って簡単に結論づけるのではなく、人類の生物としての進化の過程で必然的にそのような認知バイアスを持つようになったということが分かりました。
そういうことを理解したうえで認知バイアスを理解し時にはうまく使うと非常に効果的であるということ、しかし使い方を間違えると恐ろしい結果を引き起こすこともあるとことその両面を知っておかなければならない。
最近盛んにイノベーションという言葉が使われていますが、イノベーションとは無数の既存のアイデアからなっており、突然脈略もなくぱっと浮かんでくるものではなく、無数の既存のアイデアを知らない人、その組み合わせ方を何度も試し失敗を続けたことのない人にイノベーションを期待するのは難しいという部分は100%同意できます。日本企業から画期的なイノベーションが生まれない理由が完璧に説明されています。
失敗を許さない風土、旗を振るが自分では何も手を動かして試行錯誤をしない風土それが原因なのではないかと思います。得てして何か奇抜なもの、人を驚かすようなものをイノベーションととらえがちですがそれでは真のイノベーションは起きないということが認知的な視点からわかりました。
そしてもう一点日本企業が大好きなブレーンストーミングについても、生産性や多様性が全く高まらないことを本書は説明しています。
ブレーンストーミングの有効性を検証する22の実験のすべてが有効性を否定しており、80%の研究で生産性や多様性に対してむしろマイナスの影響を与えることが確認されているということだそうです。
これは私が普段のブレストに感じることとも一致しますが実験的に確かめられているということで自分の思いが正しかったことを確認できました。
生産性や多様性を高めたければ今後はブレーンストーミングはやめたほうがよさそうです。
こうした創造や共同に関するバイアスについて記述した7章、8章だけでも読む価値はあります。
そして、9章で「認知バイアス」に関するメタな考察から、認知バイアスというものがまだ研究途上であることも分かります。
人を対象にした製品やサービスに係る企業人の皆さんに一読をお勧めします。