しんさんのブログ

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「Moonshot ファイザー不可能を可能にする9か月間の闘いの内幕」アルバート・ブーラ/著 を読みました。

Covid19は今日現在も日本で猛威を振るっています。
ただ、2年前と違い死につながる怖い病気という意識は薄れていると思います。
その大きな理由の一つにワクチンがあります。
ファイザーとモデルナが供給するmRNAワクチンは信じられないような短期間で開発そして、大量生産に成功し世界中へと届けられました。
その過程をファイザーのCEOであるブーラさんが当時の様子を詳細に描写しています。
特に第5章の治験結果の発表のところは涙なしには読めないほど感動しました。
まさに科学の勝利の瞬間を、ブーラさんは隠すことなく読者に公開してくれています。
読み始めたら止まらなくて、一気に最後まで読んでしまいました。

そして本書を読み終えて個人的に感じたMoonshotに必要な要件とは、Moonshotにはだれもが共感する大きな意味がないといけないということです。
ファイザーの場合には、世界中の人々の命を救う、しかもそのために残された時間がない。
「時間は命」これが今回のMoonshotの大義名分でした。すべては究極的にはこの一言に集約されていました。
安全で効果の高いワクチン、しかも世界中の何十億という人々が同じ品質のワクチンを平等に接種できるようにするというとてつもないMoonShotを短期間で成功させることができた理由はそこにあったのではないかと思います。
ただ命を救いたい、人々の健康を守りたい、この思いがMoonshotを成功に導いた理由でしょう。
そして、その思いにひたすら忠実であったCEOのブーラさんの言葉や行動が優秀な社員を一つにまとめて、Moonshotを成功させた最も大きな理由ではないかと、本書を読んで感じました。

きっと今日もファイザーの研究者たちはコロナの有効な治療薬の開発のために日夜研究を進め、科学の勝利のために議論を戦わせているのだろうと想像しながら本書を閉じました。