しんさんのブログ

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「ChatGPTの頭の中」スティーブ・ウルフラム著 を読みました

お正月1冊目の読書はウルフラムが書いたChatGPTに関する本です。

ウルフラムと言えばあのMathematicaを開発したことで名が知られています。 また、言語学の研究もしており言語モデルニューラルネットワークにも造詣が深い人物です。
そのウルフラムがChatGPTの登場に驚くと同時に、その限界とMathematicaのような計算言語との融合による新たな可能性について述べています。

ChatGPTがなぜあれほど少ないパラメータであたかも人間のように流ちょうに言語を扱うことができるのか、ウルフラムはそれについて人類はまだそれを説明できるような科学的な知識体系を発見していないと書いています。

ただ言えるとことしてこれまで人が行う非常に高度な能力と思われていた、人間のように会話するだとか小論文を書いたりメールを書いたりするという行為は計算論的には非常に簡単で浅い行為であったということが、ChatGPTで明らかになったということです。

本書は大きく2章に分かれており、1章ではChatGPTの仕組みについてウルフラムの切り口で解説しています。 2章はウルフラムらの開発するWolfram AlphaとChatGPTが融合することで、それぞれが補完しあって人間のように会話するChatGPTが計算言語を手に入れることができると論じています。

厳密に答えが出せるような問いに対してあいまいな返答や間違った答えを返すChatGPTがWolfram Alphaと対話することで論理的で正確に答えを導き出す能力を得ることができると述べています。

ページ数で言うと8割程度が1章で残りのわずかが2章及び今後の展望なのですがウルフラムのほんとに言いたいことは後半の2割に凝縮されていますので途中で投げ出さずに最後まで読むことを勧めます。

ちまたにはChatGPTの使い方とか使いこなすとこんなに便利になりますよといった本があふれていますが、本書はそういう一般書とは一線を画す、言語モデルの本質を明らかにしようとする著者の知的好奇心が凝縮された良書で、普段AIに携わる人もそうでない人も必ず読んでおく必要がある書籍だと思います。