しんさんのブログ

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「クララとお日さま」 カズオ イシグロ/著 を読みました

クララとお日さま
ノーベル文学賞を受賞したカズオ イシグロがAIに関する長編小説を書いたと聞き、ずっと読みたいと思っていましたが時間が取れたのでようやく読了しました。
長編なので少しずつ寝る前に読み進めていくうちに、途中からこれはとんでもなく深い小説だと気づきまた。
主人公はAIを搭載した人型ロボット(クララ)で、そのクララを購入した少女とその家族や友人、そしてその周辺の人を中心に話が進んでいきます。
とにかく映像の描写がすばらしく、目をつぶれば小説の中の情景が浮かんでくるようで、そのまま映画化できるのではないかという印象です。
そして一番興味があったAIについてですが、近い将来AIが人の生活の中に入り込んできたとき人は”それ(AI)”に対して"人"はどのようにふるまい、”それ”は人の生活や考え方をどのように変えていくのか?人と人との関係性も変わっていくのか?
この小説では答えは出していませんが、著者のすごい描写力のおかげで読み進めるうちに頭の中にAIと人とが共存する未来がもどかしいほどぼんやりと浮かんでくるようです。
最後の第6部で読むのがつらくなりそうになった自分を小説の中のクララの強さが現実へと引き戻してくれました。
そしてAIとはこうであって欲しいと私は強く思いました。
そのためには今何をすべきかどのように心構えすべきかの示唆を得た気がします。

最近、会話型AIがまるで人が作ったのと区別がつかないような文章を生成し始めました。
そのタイミングで本書のような素晴らしいAI小説に出会えたのはラッキーだったと思います。